二章 (part 1)
「こんばんは、警察の方」とリュシエンヌは言った。「どうお手伝いできますか。」
警察はリュシエンヌを厳しく見つめた。彼女は緊張で心臓が高鳴り、背中と脇に汗がびっしょりだった。警察の目は彼女から彼女のアパートまで行き来していた。リュシエンヌは警察の疑念に満ちた視線に次第に不安を感じた。
「あのう。。。」リュシエンヌは震えながら言った。
「ドアの外に出てください」と警察は命じた。
リュシエンヌは指示どおりに動き、キットラーを横目で見た。キットラーは膝でつかされ、静かで虚ろな目をしていた。リュシエンヌはパニックになり、耳の中で大きな鈴の音が鳴っているように感じた。
「何も知らない、何も知らない、何も知らない」とリュシエンヌは心の中で繰り返した。
「この女性を知っていますか」と警察はついに尋ねた。
「あ、うん」とリュシエンヌは頷きながら答えた。「彼女は私の燐人です。」
「名前を知っていますか」
「はい、キットラー・コーバンです。」
「今朝、コーバンさんと話していましたよね?」
「はい。」
「何について話しましたか?」
「毎朝、彼女が廊下に包装を残しているので、そのことで苦情を言いたかったんです。」
「そうですか。じゃあ、他に何か相談していましたか?」と警察はリュシエンヌに嘘発見器をさらに気づけながら言った。
「時々を挨拶を交わしたり、彼女のお母さんや私の仕事の話をしたりしていただけです。」とリュシエンヌは震えながら答えた。
「わかりました。このマンションの外で会っていたことはありますか。」
「いいえ!全然外で会ったことはありません!」とキットラーは声を上げた。
その瞬間、全員がショックを受けた。特に警察は驚いていた。
「私たちはただの気さくな燐人です。私が何をしたというのですか?彼女のことを述べるのは話せません」とキットラーは怒りを露わにした。
リュシエンヌはキットラーがいきなり怒りを爆発させたことに困惑した。でも彼女の心の中で罪悪感がだんだん薄れていく一方で、自分を信じようとする気持ちが強くなっていた。警察は嘘発見器を確認し、彼は彼の同僚に向かって頷いた。リュシエンヌとキットラーが言ったことは全て本心であると認められた。一瞬問、警察たちはキットラーに床に伏せさせ、リュシエンヌを強引にアパートの中に押し戻した。キットラーは声にならない「ごめんなさい」を口パクで伝えた。彼女の目はキラキラしていた。
パーン ボカーン
リュシエンヌはまだアパートの中に完全に入っていないうちに、キットラーが撃たれたのを見てしまった。叫びたかったが、何も声が出なかった。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と警察はドアを閉めながら言った。
ドアの向こうで、全ての音がまだ聞こえていた。警察の一人が命令を出し、他の警察がそれに従って動く音。誰かがキットラーの遺体を運び、他の警察が彼女のアパートを捜索する音。
一時間、
三時間、
五時間が過ぎた。
リュシエンヌはずっと同じ場所に立ち尽くしていた。全く動けなかった。全てが静かになったときリュシエンヌは涙をポロポロ流し始めた。寂しさと絶望が彼女を包み込み、心に重くのしかかった。最近の出来事が頭の中で何度も再生されていた。ハグが欲しいけど、誰も抱きしめてくれない。
「どうしてキットラーをここで殺さなければならなかったのか」とリュシエンヌは心が落ち着けようとしながら考えた。
「普通なら容疑者を捕まえて刑務所に送るだけのに」大きな息から吐き出した。
「はばん、人間の物を集めるという新しい方針について、何か情報を述べてください」ついに立ち上げたが、足がまだブルブルしている。
「承知しました。人間の物を集めるという新しい方針の情報は、警官が十分な証拠を持っている場合、容疑者をその場で殺すことができるというものです。」
「本当に?どうしてそんなことが?!」
「ごめんなさい、あなたの問題には答えられません。」
「彼らには何の証拠があったの?私は何も見ていない。」
「ごめんなさい、再び回答出来ません。」
「じゃあ、もういい!」リュシエンヌは怒りに任せて記憶を消している機械を取り上げ、部屋の向こう端から投げた。彼女の機械を壊してしまった。怒りとパニックに駆られ、部屋の中を行ったり来たりしていた。全てを忘れたかった。全ての事を忘れる必要があった。再び泣いていたが、今度は涙が流れなかった。ビル全体が静まり返っていた。もちろん、他の燐人が彼女を訪ねて来ることもなかった。
「最後にキットラーと話したのは私だから、同じ問題を訴えていたのに、なぜか私だけが罪悪感を感じている」とリュシエンヌはおずおずと笑った。
ドクンドクン
ドクンドクン
ドクンドクン
「彼らは私をハメようとするんだ」リュシエンヌは怒りに立ち上がった。
彼女はアパートを出て、辺りを見回した。警官がいないことを確認し、キットラーのアパートのドアに静かに気づいた。ドアを開けてみたが、閉まっていた。リュシエンヌは再び廊下を確認し、体でカメラの視線を遮った。彼女の親が彼女の体に追加していたボーナス機能を使って、他のドアに力を加え始めた。それは、ドアを壊して開けるための余分な力だった。この機能をお願いした。
キットラーのアパートは薄暗くて汚れていた。リュシエンヌは何もやっと見えなかった。キットラーが汚れを作ったのか、警察が作ったのかわからなかった。全ての物が床に散らばっていて、欲しいものを探しにくかった。近くのものを手にとって調べてみたが、木玉や人形、救急爆など無用なものばかりだった。
「ゴミだ」とリュシエンヌはぼそっとつぶやいた。
部屋の奥へと進んでいくと、窓際の床に写真が落ちていた。それはキットラーと彼女のお母さんの写真だった。小学校の科学博覧会に行った時の一枚、キットラーが高校や大学の卒業式に出席していた写真もあった。それぞれの写真の中でキットラーはだんだん暗くなり、彼女のお母さんはイライラしているように見えた。最後の写真には赤ちゃんキットラーと誇らしげなお母さんが写っていた。リュシエンヌの頬に一筋の涙が無意識に流れた。彼女はそれを拭い、写真をそっと置いてから、再びアパートを探し続けた。
キットラーのベッドは充電ベッドだったが、今は物が散乱していた。ワイヤーが引きちぎられ、多くの部品が壊れていた。その光景を見てリュシエンヌの背中に寒気が走ったが、彼女が探していた物はベットの下にあった。しかし、その記憶を消している機械も壊れていた。崩れかけた機械を見つめながら、絶望感に襲われた。
何をしているのかリュシエンヌは、自分でも分からなかった。すべてを壊したいが、あいにく部屋はすでにめちゃくちゃだった。罵り言葉を叫び、再び涙が溢れそうになるのを感じた。
「今度じゃない」と怒りに満ちた声でつぶやきながら、腕のパネルを開けた。
体の機能を調整し始めた。涙を止めるために涙の機能をオフにし、涙を流す力を封じた。今、今はただ怒りだけを感じていた。その怒りに何をするのか、まだ分からなかった。壊れた機械を再び見つめ、忘れられないもの、壊しても心が晴れないもの、何か燃やすしかないと思い始めた。窓側にある写真や、集めた人間の物、一枚キットラー古いシャツを手に取った。
キットラーのアパートを出て、エレベータで下に降り、ビルから北に歩いていた。自分の燃やしている葬式の箱まで到着した。箱のシュートを開け、手に持っていたものをその上に置いた。右側の箱の壁にはフォームが置いてあった。一枚フォームを取り、ガット書き込み始めた。
死者の名前 キットラー・コーボン
死者の最終の年齢 28才
死者の生年月日 4538年5月25日
死者の居住 568APT#412ガチャンキャンディ大通り
死ぬ場所 死者の自宅
死んだ根源
リュシエンヌはその欄を見つめた。何を書くべきか考え込んだ。
「警察は彼女を容赦なく殺した」と思い、「審理もなく有罪判決を受け、多くの警告を無視して人間の物を集め、他の危ない状況を関わり続けた結果のはどう」
そんな思いがリュシエンヌの頭が激しく脈打たせた。
「撃たれた」とだけ記入した。そして、フォームを書き続けた。
死者を送別している者の名前 リュシエンヌ・レアーリ
死者を送別している者の関係 燐人
今日の時日 4566年10月12日
リュシエンヌはケットラーのシャツを丁寧に敷き、他の形見と共にフォームを中に入れた。全ての物を箱の中に収め始めると、何かがポトリと落ちた。拾い上げてみると、それは驚くべきものだった。
同じように倉庫の階で見つけていた継ぎだった。リュシエンヌは手が震えるのを感じながら、その継ぎを取り上げた。目の前にあるものが信じられなかった。
「オベだが言ったことが正しかったの?働いている会社全体が何か人間のプロジェクトに繋がっているの?テアナウ課長だけが?」彼女の頭の中では、次々と問題がバシバシとぶつかり合い、パニックに襲いかかってきた。
全てを燃やしてる葬式箱の中に放り投げると、リュシエンヌはすぐに帰宅し、床に座り込んだ。今は、以前にも増した何か安らぎが欲しかった。頭の中では人間が何を使っているのかという思いが離れなかった。
「彼らは木玉や人形を使っているの?救急爆は?」そんなことを考えながら、人間がそれらを使っている姿を思い浮かべてしまった。「やめて!」彼女は必死に頭を振った。
「明日は機械修理業者に行って、私の機械を直してもらおう。そしたら、すべてを忘れられる。。。」彼女は心を落ち着かせようとつぶやいた。「はばん、柔らかい安楽音楽を流して。」
「承知しました。柔らかい安楽音楽をお流しします。」はばんが冷静に答えた。
リュシエンヌは寝付けず、心の中で軽い影が渦巻いていた。
次の日、リュシエンヌは目覚ましを無視したまま、暗闇の中で寝坊した。恐怖と焦燥感に駆られながら、ベッドから飛び出し、服を引っ張って無理やり着込み、鏡すら見ずにアパートを飛び出した。オベダがどこにいるのかも考えず、ただ市の時計を見て、時間通りに着くことだけを祈りながら走った。
しかし、職場に着いた瞬間、彼女の心臓は氷のように冷えた。そこには集団の警察が立ち尽くし、彼女の同僚に無情な質問を投げかけていた。冷たい空気を引き裂くように、死んでドールが床を引きずられていた。視線を引き寄せたその体を、リュシエンヌは一瞬で認めた。
「テアナウ課長。。。」と彼女は息を飲み、かすれた声で呟いた。
彼女の視界はぼんやりと滲み、事務所内を見回した。ショックで凍りついた同僚たちの顔、恐怖と嫌悪に歪んだ表情が次々と目に入った。だがリュシエンヌは、目を背けることなく、その中でただ一つの顔を見つけた。涙を堪えながらも、リュシエンヌは体の震えを止めることができなかった。何かが間違っていると感じつつも、それが何かを正確に理解するには、事態はあまりも衝撃的すぎた。
「何かがテアナウ課長の事務所で。。。」リュシエンヌは胸が詰まるのを感じながら、疑問を呟いた。
そして、オベダがその場にいることに気づいた瞬間、彼女の心臓を凍りついた。
「オべ、オベダ、どうしてテアナウ課長の事務所にいるの?」